食品メーカーで働く本間さん。職場に対する不満を、同期の大石さんに打ち明けているようです。
本間 最近主任から、「まだこんなこともできないの?」とよく叱られるんだよね。俺としては先輩の言うとおりに仕事しているのに、勝手だよな。
大石 そうなんだ。そんなに仕事を覚えるの遅れているの?
本間 そんなことないさ。入社して半年後に、誰よりも早く今の仕事に就かせてもらったんだぜ。
大石 すごいじゃない。じゃあ、何で叱られるの?
本間 よく分かんないんだよね。確かに、自分でも最近はスピードダウンしているなって思うよ。でもさ、うちの先輩って、最近俺のことほったらかしなんだよね。
これ以上俺に成長されたらどうしようって、焦ってんじゃない?かんべんしてほしいよね。
大石 他に誰か教えてくれる人はいないの?
本間 いない、いない。基本的に他の先輩は俺のこと気にしていないから。俺もあまり相談しないしね。
大石 そうなんだ・・・。
努力の主体は自分
ジェックでは、新入社員向けに「学生意識から、企業人としての意識への切り替え」を目的とした研修を行っています。なぜなら、学生のことの意識のままで、企業でうまくいくとは限らないからです。
例えば、学生は授業料を払って学校に通います。ところが社会人になると、仕事をして企業から給料をもらう立場になります。
お金を頂くわけですから、当然成果を上げなくてはなりませんし、成果を上げられるように、自分から多くのことを身に付けていかなくてはなりません。
もちろん、企業側としても成果を上げてほしいですから、社員に対して教育をするでしょう。しかし、社員としてお金を頂いている以上、成果を上げるための力を身に付ける努力は、働く者としての務めです。
つまり、能動的に学ぶこと、人任せにせず自分の責任で成長していくことが求められます。
成長しないのは会社のせい?
ところが、学生意識が抜け切っていない本間さんは、「成長しないのは会社がしっかりと教えてくれないから」と、人のせいにしてしまっています。
「誰よりも今の仕事に早く就いた」というのですから、最初は先輩から教わったことをどんどん吸収し、成長していったのでしょう。先輩も一つ一つ仕事を教えてくれていたのでしょう。
ところが今では「ほったらかし」のようです。これはいったい、どうしたのでしょうか。
先輩としては、当然本間さんに成長してほしいと願っているはずです。ただ仕事を教えるだけではなく、本間さんの企業人としての成長も考えて指導していることでしょう。
しかし、本間さんが企業人として成長し続けるためには、先輩がずっと手取り足取り教え続けなければならないのでしょうか?
先輩も、本間さん自身が自らの経験を生かし、「成果を上げるために、主体的に学ぶようになってほしい」と、そう願っているのではないでしょうか。
ところが、受け身の姿勢で教えてくれるのを待っている本間さんとしては、「教えてくれない」、「ほったらかし」と捉えてしまい、仕事に対する意欲まで低下してしまったというのが今回のケースです。
意識の切り替えはできていますか?
なぜ、本間さんは「教えてくれない」、「ほったらかし」とネガティブな感情になってしまったのでしょうか。
本間さん自身も、悪気があって教えてもらうのを待っていたわけではないと思います。
では、どのような意識が邪魔をしているのでしょうか。
「学校に行けば、先生が教えてくれる」という学生時代の習慣が抜け切れず、企業に入っても「会社にいけば、先輩が教えてくれる」という意識のままだったことが原因として考えられます。
このままでは、本当は成長して仕事を身に付けたいという、本間さんの本来の想いを実現するのは難しいでしょう。
本間さんのようなケース以外にも、同じように受け身の意識になりやすい、いわば落とし穴となる時期が何度かあります。例として記載しますので、自分に当てはまる項目があるかどうか、チェックしてみてください。
皆様の振り返りの材料にしていただければ幸いです。
①入社して間もないころ
先輩たちに一つ一つ丁寧に教えてもらえるので、安心してしまう
②希望の部門に配属されなかった時
落胆して、業務に積極的になれない
③ある程度、一人で仕事ができるようになったこと安心してしまう
④基本的な仕事は着実にできるようになったが、仕事の変化が少ない時
今の自分で大丈夫と、スローダウンしてしまう
⑤人よりも成果を上げられるようになったころ
周囲には学ぶ対象がいないように思えてくる
設問:以下の項目を読み、ご自身の考え方と同じ場合にはチェックしましょう。
チェックが入るようであれば、本間さんのような考え方に陥っている可能性があります。
□教えてもらえなければ、成長しなくても仕方がない
□モチベーションが上がらないのは、会社が悪いから
□教わったこと以上の努力は、給料とは関係ないから必要ない
□与えられた仕事はちゃんとこなしているから、それ以上を求めるのは会社の傲慢である
□会社が求めるレベルは、自分にはしょせん無理
□教わった通りにやってうまくいかないのは、教えた人のせい
□うちの会社には、教わるようなことはない
本原稿は、株式会社ジェック『行動人』から転載・加工いたしました。