無慈悲な管理者

サン=テグジュペリと聞くと『星の王子様』を連想する人が大多数だろう。 しかし、それだけではなく、自身の飛行機乗りとしての体験を基にした小説がいくつかある。 その中の一つ、『夜間飛行』という小説では、過酷な郵便飛行事業に臨む管理者の姿が描かれる。 彼自身の信念に基づき、事業を成功させるため、わずかなミスも許さず、暴風雨に向かって飛び立つ操縦士を鼓舞し、たとえ操縦士を失い、一時的に落ち込んだとしてもすぐに立ち直り、事業を継続させる。 (参考:サン=テグジュペリ『夜間飛行』堀口大學訳, 新潮文庫, 1956) ブレイクとムートンが提唱した「マネジリアル・グリッド論」でいえば、成果を追求し人間関係をおろそかにする「9.1型」の典型のような管理者だが、その内実は、自らが解雇した整備員に同情し、操縦士である夫を亡くした未亡人の心を推し量り黙想する。 私の知るある経営者は、現場には一切、数字=売り上げを求めない。 200近い店舗があるが、ブロック長クラスにさえ、数字を詰めることはない。 ブロック長や店長には、売り上げではなくお客様評価、サービスレベル、従業員との関係に神経を使うように促す。 現場の従業員には、ひたすら優しく、配慮する。 末端の社員の家族構成まで知ろうとする。 その一方で、本部の部長クラスには、一日二回、数字を報告させている。 自部門の数字を把握していない部長は、容赦なく叱る。 さらには、最前線の社員の悩みを聞いていないと叱る。 この社長は、部長以上を経営者として見ており、あたかも自分の分身のように思っている。 だから、自分と同じように行動できることを求める。 従業員と部長への、社長の接し方は全く反対なので、「二面性がある」ように見える。 「夜間飛行」の管理者の判断基準は、あくまで「事業の継続」にあり、苦悩しながらも、その信念に従ってマネジメント行動を選択している。 前述の経営者も同様で、事業の拡大を意識し、人とその役割に即して、それぞれ違う一面をもって接しているに過ぎない。

そして、それは経営の要諦を突いているので、この経営者は増収増益を続けている。 そもそも人は多面的であり、一面だけしかない単純な人は少ない。 「あの人は裏表がある」と言われる人もいるが、よく観察すると、状況や人によって、最善の行動を選択しているに過ぎないことも多い。 だから、一時の行動だけで人を決めつけてしまうと、生かせない、遠ざけてしまうことになるのだ。 自身や他者の行動を表面的に見ていないか、その奥には何があるのか、それを知るか知らないかは大きな違いになるだろう。


20191114 ジェックメールマガジンより  

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