しなやかで強い組織をつくる


今、未知の時代です。

その中で、企業や人はきたるべき時代を読み、時代の変化に柔軟に対応する「しなやかさ」をもちつつ、「強い」状態を維持する必要があります。


「このままではいけない」「変化を起こす必要がある」ということは、ほとんどの人が感じます。一方で「目の前の仕事で手いっぱい」「まだ何とかなる」という意識が、変化を起こすことを拒み、結局何の動きも起こさないままに組織が硬直化していくというのが現実です。


この状況に一石を投じ、組織に「しなやかさ」をもたらすのがリーダーシップです。


1.組織に「しなやかさ」を生み出すリーダーシップ


「強さ」だけを追求するならば、「目標を掲げる」「方向性を定める」「けん引する」といった、リーダーシップで良いかもしれません。しかし、「しなやかさ」を生み出すためには、次のような要素が必要です。


① ワクワクビジョンを「しつこく」語り合う


「ビジョンを描く」というのは、リーダーシップに必須ですが、これからは「ワクワクさせる」ということが欠かせません。なぜなら、ワクワクすれば数年先のビジョンが常に意識の中にあり、「先を見る」ことが当たり前になるからです。


先を見ることが当たり前になれば、時代の変化に敏感になり、「しなやかさ」に対応するための目が育ちます。


ワクワクさせるコツ。それは、しつこいくらいにビジョンについて語り合うことです。「また、ビジョンの話?」と思われるくらいやって初めて意識に残ります。


② 異質な価値観を大いに歓迎する


本当に多様性を受け入れるのはなかなか難しいものです。なぜなら、人は自分と似た価値観の人と一緒に過ごしたがるものだからです。


しかし、様々な価値観の人がいれば、誰かが変化に気づいたり、変化に対応するアイデアを出せるかもしれません。


「しなやか」な組織には、様々な価値観の人が必要です。

その組織の伝統的な価値観と異質な価値観を持つ人を大いに歓迎できるかどうか。これが今後のリーダーシップに問われます。


③ 必要のないことを思い切って破壊する


「しなやかさ」を邪魔しているのは、伝統的に行っている「必要ないこと」です。

例えば、「必要ないと分かっていながら行っている定例会議」「必要ないと分かっていながら入力しているエクセルデータ」「必要ないと分かっていながら訪問している取引先」など。


「必要のないこと」を行い続けている組織は、「変化しなくてよい」という悪い意味での安心感に包まれています。そのような状況を一掃するのが、必要のないことを破壊する(思い切って廃止する)ことです。


廃止することで、「組織が変わろうとしている」「変化をしようとしている」と実感させることができ、しなやかな組織へのきっかけとなります。



2.マネジメントだけでは、変革は起こせない


例えば、明らかに年々成果が出にくくなっている状況の組織があったとします。

誰もが頭の中では「今までのやり方を続けていても、成果の上昇は望めない」と分かっています。


にもかかわらず、「もっとしっかりPDCAを回そう」「前倒しで行動して、今年は何とか目標達成しよう」と「今までのやり方前提」で号令をかけることに終始する管理職が多く存在します。


これは、マネジメントだけをしてリーダーシップを怠っている状況といえます。


リーダーシップ開発で著名なジョン・P・コッターは、「マネジメントの根本的な目的は、既存のシステムを動かし続けることであり、リーダーシップの目的は、効果のある変革、特に大きな変革を生み出すことにある」*1と述べています。


決められたことを、その通りに遂行させるための「マネジメント」は必要です。しかし、マネジメントだけに意識を集中していると、変革が起こりにくい「硬直した」組織をつくってしまします。硬直した組織では、大きな変化の波に飲まれてポッキリ折れてしまうでしょう。


3.変革に向けて自分の意思で決断できるか?


一方でリーダーシップは「そもそも何をすることが、組織の成果を最大化させるか」から考えます。これまでのやり方には捉われません。


社会を取り巻く大きな変化に伴い、企業も大きな変革を迫られている今、現場の管理職も経験したことのない状況変化に直面するはずです。


その時に、これまでに前例のない変革を行うために、リーダーとして「自分の意思で決断」できるかどうかが問われます。決断し、変革のスタートを切ることが変化に対応できる「しなやかな組織」への第一歩なのです。


前例のない局面において「リーダーとして自分の意思で決断する」ために必要なことは何かをお伝えします。


①自分のポリシーを明確にする


前例がない状況では、これまでの経験に頼った判断ができません。もちろん、データや他社事例なども参考になりますが、最終的に決めるのは自分です。


そこで、自分が仕事において「大切にしている・こだわっている考え方」を見つめ直すことが必要です。「チャレンジし続けることが、お役立ちにつながる」「スピーディーな対応が、信頼を生む」「お客さまと直接対話すれば、必ずヒントが得られる」等、言葉にしてみることをお勧めします。


ドラッカーは、「リーダーシップは賢さに支えられるものではない。一貫性に支えられるものである」*2と言っています。自身のポリシーが分かっていれば、一貫性のある決断をすることができ、迷いが生じにくいはずです。


②「やるか、やらないか」で決める


決断をする際に、「できるか、できないか」から考える人がいます。その結果、「今の人数では、難しいからやめよう」などと、現状維持の弱気な決断ばかりしてしまいます。これはまさにマネジメントだけしかしてこなかった人の「失敗させない」思考です。


リーダーシップを発揮するのであれば、「やるか、やらないか」で判断してください。必要であれば「やる」とジャッジし、やり方はその後考えればよいことです。「今の人員では厳しい・・・」ではなく、「この人員でやるにはどうしたらよいか?」を考えるのがリーダーシップです。


③周りの顔色を伺いすぎない


決断の目的は、変化に対応してしなやかな組織となり、成果を出し続けることです。本当に必要だと思ったら、周りから多少反対があったり、嫌な顔をされても決断を下すのがリーダーシップです。


組織の中で「嫌われない」ことを第一にして本当に必要な変革を起こさなければ、一見和気あいあいとしながら変革ができない、「馴れ合いの硬直した組織」をつくってしまいます。

ドラッカーは次のように言っています。「リーダーは尊敬されるが、必ずしも好かれるとは限らない」*3.


しなやかで強い組織になるためには、私たち管理職の思い切った決断がなくては始まりません。




4.リーダーシップには「会話」が必要である

組織を新たな方向に変革するのはたやすくありません。なぜなら、これまで「東向きが正しい」と考えて進んでいた組織に対して、「東ではなく西に向かう」と宣言し、全体を納得させて動きを起こすことが求められるからです


全体を同じ方向に向けるためにはどうすればよいのでしょうか。「決まったのだから、やって当然」とばかりに命令する方法も考えられますし、動きやすいように「組織を変える」という手も考えられます。


この点について、コッターはこうも言っています「人々をまとめるには、組織化するよりもたくさんの人たちと会話をする必要がある。しかもその相手は、部下だけでなく、上司や同僚、他部門のスタッフ、サプライヤー、役人、そして顧客にまで及ぶ」。*1


要するに、組織を変革するためには、新たな方向に向かうために手を貸してくれる人、妨害する人を問わず、関連する人たちと徹底的にコミュニケーションを取ることが大切であると言っているのです。


5.名リーダーに見る「会話」の中身


確かに、どの組織でも大きな変革を起こして成果を出し続けている「名リーダー」と呼ばれる人たちは色々な人とひっきりなしに会話をしています。それも、受け身の会話ではありません。自分の方からアクティブに話しかけているのです。


会話の場所は、公の会議に限りません。オフィスの隅で、ランチ時に、時には飲み会でも、色々なところで様々な人との会話を意図的に行っているのです。


では、そのような名リーダーはどのような会話を行っているのでしょうか?


① 信用を得ることを考えた会話


まず一つ言えるのは、名リーダーと呼ばれる人は、グチや悪口といったネガティブな会話をほとんどしません。そのような会話をする人が「信用されない」ということを分かっているからです。


信用されないとどうなるか?もちろん新たな方向を打ち出した際に、賛同してくれるはずがありません。日頃の会話で「この人は信用できる」「話していて気持ちいい」と感じているからこそ、様々な人から「いざという時に協力しよう」という気持ちになってもらえるのです。


② 新たな方向性を「楽しく」語り合う


「ちょっと、面白いことを考えているんですが、アドバイスもらってもいいですか?」と、楽しい話として新たな方向性を語ります。重要なのは、「アドバイスもらってもいいですか?」という点。アドバイスをもらうことで、「面白い話」に参画してもらい、早い段階で変革を一緒に行う仲間を増やしていくのです。


なお、「面倒くさいけど、変えないとこの先が行き詰るので、協力してもらえませんか?」といったニュアンスで働きかける人が多いのが現実。「楽しく」語れない人は、リーダーシップが弱いと言えます。


③ 反対意見の人にこそ丁寧に会話する


組織の中には変革に反対する人がいるのも事実です。リーダーシップという言葉に反対意見の人たちを無視して強引に変革を進めるイメージを持つ人もいるようです。


仮に強引に進めると、納得していない人たちが足を引っ張り、変革が頓挫するかもしれません。そうなると、時代やお客さまの変化に対応できず、結果的に「硬直した組織」になってしまうのです。


名リーダーは、反対意見の人の話もしっかり聴き、話し合いを行い、納得してもらうことを

怠らないのです。


6.自部門だけ見ていてはリーダーシップは発揮できない


このようにリーダーシップには「会話」が必要であり、自ら様々な相手に働きかける必要があります。しかし、実際には自分の部下や上司といった限られた人としか会話を行わない管理職が多いようです。


その原因は、「自部門の成果を高める」というポイントにのみ意識が向いているからにほかなりません。リーダーシップとは、「組織の成果を最大化する」ことです。「組織」とは、自部門だけではなく企業全体を指します。


「企業全体の成果が最大化する状況になれば、当然自部門の成果も高まる」という考えを持つ人こそがリーダーシップを発揮できる人であり、幹部になるべき人なのです。


本原稿は、株式会社ジェック『行動人』から転載・加工いたしました。


(参照)

*1 ジョン・P・コッター、『【新訳】リーダーシップとマネジメントの違い』(論文:ダイヤモンド ハーバード・ビジネス・レビュー)、ダイヤモンド社、2015年

*2 P・F・ドラッカー、『プロフェッショナルの条件』、ダイヤモンド社、2000年

*3 小林薫、『ドラッカーが語るリーダーの心得』、青春出版社、2004年



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