「話題選び」には事前の準備が必要
「話題選び」と「信頼関係づくり」がお客さまの悩みを引き出す
確かに理屈で考えれば、お客さまの幅広い仕事上のお悩みが、自分の扱う商品にかかわることにつながってくるなど、偶然か、あるいは強引に結びつけること以外にないのではないかと思えてしまうかもしれません。
ところが、売れる人というのは、ここが違います。
商談を聞いていると、まるで魔法にかかったように、お客さまから、
「君、何とかできないかねぇ」などと相談をもちかけられたりいています。
これはいったいなぜなのでしょうか?
多くの場合、売れる人の商談を、「あの人だからできるんだよ」の一言で片づけてしまいがちです。ハッキリと申し上げますが、だから売れずに苦しむ人が多いのです!
その鍵は、「話題選び」と「信頼関係づくり」です。
事例から学ぶ「話題選び」
出版社営業の彼(Aさん)が、こんな話題を切り出した。
Aさん 「法人のお客さまとはどんな話題をなさるんですか」
私 「そうですねえ、中小企業の社長さんや役員だったりしますから、経営の話題、特に業界を取り巻く環境の話なんかが多いですね」
Aさん 「そうですか。そういった話題は、お客様はかなり得意なんでしょうね」
私 「とんでもありません。四苦八苦苦しんでいますよ」
Aさん 「でも、日経新聞とか、毎日読まれているんですよねぇ」
私 「そんな時間、とてもじゃないけどつくれないですよ」
Aさん 「では、今後いろいろな社長様と商談をするに当たって、直近の経済や政治などの情報はどのように整理なさっていこうとお考えなんですか?」
私 「それがねぇ・・・」
どうでしょうか?純粋に生命保険の営業マネジャーである私の問題を話し合っているにもかかわらず、徐々にAさんの商売にかかわる分野に話題が向かいはじめています。
これは、最初の話題設定と、その後の質問内容の選定が巧みであるからです。「法人とのコミュニケーション」に話題を振り、会話の進行とともにテーマを「時事情報」に絞り込んでいっています。
もちろん、彼は場当たり的な直感で、会話を進めていったのではありません。生命保険の営業マネジャーがどのような悩みを持っているのか、そこに自分の売るものがどのようにかかわる可能性があるのか、いくつかの観点で仮説を立ててきたからこそ、可能となる商談なのです。
それでは、行動理論(今回は「観」=事実認識)で整理します。
■誤・・・お客さまの問題意識を引き出せるかどうかは、そのとき次第、運次第
■正・・・お客さまの問題意識を引き出せるかどうかは、仮説や話題の準備次第
本原稿は、株式会社ジェック『行動人』から転載・加筆いたしました。