効果的な「提言」の仕方とは
問題意識を引き出され、私たち営業に相談を持ちかけてくださったお客さまに対し、その場で効果的な提言をすることで、大きく二つのメリットが出てきます。
① こちらをプロとして信頼してくれる
② 提言がたたき台となり、お客さまの問題意識がもう一段深まる
つまり、提言がうまくいくかどうかは、私たちの商談スキルがランクアップできるか否か、まさに大きな分岐点となるのです。
そこで今回は、効果的な提言の仕方について、具体的に考えてまいりましょう。
「提言」の全体の流れ
細部のポイントを確認する前に、まずは、提言に期待するお客さま心理を踏まえ、全体の流れを押さえておきましょう。
私たちの提供する商品やサービスに精通していないお客さまに、いきなり具体的活用法やお客さまならではの必要性を訴えても、理解が追いつかず困惑させてしまうばかりか、最悪の場合「もしかすると売り込みか?」と警戒心を再燃させてしまいます。
したがって、提言の導入段階は、「用具を活用してセールスポイントを説明する」となります。つまり、自社の商品・サービスの特徴を、五感に訴えながらわかりやすくお伝えし、お客さまに興味や関心を持っていただきます。
すると、お客さまの中には、
「なかなか良さそうだなぁ。採用してみたいなぁ」
と、商品やサービスそのものに対する期待感が芽生えます。
半面、「でも待てよ。相手は営業だ。いいことばかり言っているが、そんなにうまくいくのだろうか?」という疑問や不安もあるでしょう。
そこで次の段階が「実例で証拠立てる」となるのです。
ここで言う実例とは、商品・サービスの導入事例、実験データ、アンケート結果、あるいはプレス記事やテレビ番組で取り上げられたこと等々、客観性の高い情報のことです。客観性の高い情報により、実際に効果の上がることを示されると、お客さまは、
「なるほどなぁ。あながち誇張しているわけでもなさそうだ。本当に効果がありそうだ」
と信頼感を高めます。
けれどもこの時点では、
「でもなぁ、よそはよそ。うちはうちでいろいろと特別な事情があるからなぁ」
と、まだまだ自分事として採用するきっかけとなるには物足りません。
「そのお客さまならでは」の提案を
だからこそ、提言の最終段階となる、「必要性を強調し、具体策を提案する」が重要なのです。ここでのお客さま心理は、私たちの提供する商品やサービスに、かなり関心を高めてはいるものの、それは総論レベルであり、
「自分が相談した問題を本当に解決してくれるのか?」
と、各論レベルにおいては、もう一歩確信を持てずにいるという状況です。
ですから、「必要性を強調する」とは、商品・サービスのセールスポイントをお客さまの個別の事情に結びつけ、
「まさにお客さまが現状抱えている問題を解決するのにピッタリなんです」
と力強く訴えることを意味します。
そればかりではなく、商品・サービスを導入(あるいは採用や購入)した後のことに関し、お客さまならではの状況(個別事情)をしっかり踏まえたうえでの運用や活用の方法論まで伝えます。それが「具体策を提案する」ということです。
ここで言う個別事情とは、私たちが相談された問題そのものだけではなく、その背景となっている人、組織やオペレーション、あるいは業界を取り巻く環境のことなど、これまでの商談で、お客さまからお伺いしたことすべてです。それら「お客さまならでは」を踏まえることが、提言の決め手なのです。なぜなら、人は誰しも、自分(あるいは自組織)固有の事情を踏まえて接してもらえるほどに、その相手に対し信頼感と親近感を高めるからです。
どうしてか?そこに特別な理由はありません。強いて言えば、人間とはそういうものだからです。ご自身に当てはめて考えてみてもそうじゃありませんか?自分を大切な個人として接してくれる人と、十把ひとからげ(種類や区別に関係なく、ひとまとめにすること)の扱いをする人、どちらを信頼し、また、どちらの人とより親しくなろうと思うでしょうか。
さて、最後の段階となるこの提言がうまくいくと、お客さまはいよいよ、「う~ん、これはかなり期待できる提案だなぁ。ぜひ試してみたいなぁ」と自分事として前向きに、真剣に考え始めます。
それでは、ここまでを行動理論でまとめておきましょう。
■誤・・・自ら相談してくれたお客さまに提言するのだから(因)、自社商品・サービスを思い切りPRすれば(因)、好感触を得られるだろう(果)
■正・・・たとえ自ら相談してくれたお客さまであっても、相手心理を踏まえたプロセスを意識して進めなければ(因)、導入(購入・採用)に対するお客さまの不安は解消されず(果)、提言の目的を果たせない(果)。
本原稿は、株式会社ジェック『行動人』から転載・加筆いたしました。