アイデアを出し合い、共通課題で合意する
「共通課題づくり」が商談におけるツボ中のツボであり、ここを押さえるか否かが、商談の正否を大きく左右します。
個別提案型商談の定義を確認しておきましょう。
「お客さまと営業担当者が一緒になって作り上げた共通課題の解決策の提案で、効果効率を上げる商談」となります。
このことから、共通課題の持つ意味合いとは、お客さまと私たち営業パーソンが同じ目的を共有し、その目的達成のために共に力を合わせていく「パートナー関係確立」が、その第一歩だということがわかってきます。
このような前提に基づき、リサーチの最後の過程である「うちあけ」の二番目の段階、「解決策のアイデアを出し合いながら共通課題で合意する」を確認してまいります。
営業パーソンの提言により、お客さまからプロとして信頼いただき、さらに懐に飛び込んでお悩みを聴き出したところ、ついに絞り出すように、お客さまはより深い個別事情を話し出してくださいました。
よくある失敗は、ここでうれしくなり、
「私が何とかいたします。ぜひお任せください!」
と大見得を切って次回のお約束を取り付けておきながら、お客さまの期待を外した、あるいは期待を大きく下回ったプレゼンテーションを行ってしまい、
「しょせん、こんな程度だよな」
と、お客さまをがっかりさせてしまうパターンです。
以前にもこの商談編で申し上げましたとおり、人間には「可愛さ余って憎さ百倍」の心理がありますので、このパターンにおける信用失墜の影響は計り知れないものがあります。
課題解決のための三ステップ
では、なぜそうなってしまうのか?
それは、やっと個別事情を聴き出せたことで商談の成功が間近に見え、逆に目的を見失ってしまうからです。アプローチからリサーチを通じて漸く相談相手の立場として認められ始めたにもかかわらず、突如成果への色気が顔を出し、あっという間に「物売り」スタンスへと豹変してしまうからなのです。
そこで、個別事情を聴き出した後の進め方を三ステップに分け、考えてみましょう。
目的は「共通課題で合意」することです。
第一ステップ・・・個別事情を整理し、
① どうなりたいのか(目指す姿)
② それに対して今はどうなっているのか(現状)
③ 目指す姿と現状のギャップを作り出している要因は何なのか(問題)
の三つを明らかにします。
第二ステップ・・・前記で確認した“問題”を取り除くために、何ができればいいのか(課題)を明確にします。
第三ステップ・・・課題解決に向けた、お客さまと営業パーソンとのディスカッションを通じ、共に力を合わせ解決を図っていくことで合意します。
この三ステップを効果的に進めるために、第一ステップでは、目指す姿・現状・問題の仮設を描き、仮説を確認していく形でお客さまに質問し、明確化していきます。
次に第二ステップでは、「なぜ、なぜ・・・」と問題を掘り下げていき、根っこにある原因(推察で構わない)を究明します。その上で、原因を打破し目指す姿へ向かうためのKFS(キー・ファクター・オブ・サクセス=成功の鍵となる要素)を整理し、共有します。
最後に第三ステップで、その課題解決に何としても役立ちたいと、営業パーソンの想いと意思を力強く伝え、
「そこまで言うなら君に賭けてみよう」
と、熱意でお客さまを説き伏せ、合意をいただくのです。
これにより「解決策のアイデアを出し合い、共通課題で合意する」段階が完了です。
それでは、行動理論でまとめておきましょう。
■誤・・・【観】-うちあけは信頼の証し
【因果理論】-お客さまが自身(自社/自組織)の深い内情を話し始めたら(因)、信頼関係はできあがったも同然(果)
【心得モデル】-さっさと本提案の約束を取れ!(果)
■正・・・【観】-うちあけはパートナー関係確立の第一歩
【因果理論】-共通課題でしっかり合意をしなければ(因)、提案はポイントを外し、信頼はかえって大きく損なわれる(果)
【心得モデル】-お客さまの課題を明確化し、共に協力して解決を図ることで合意を取れ!
いずれにしましても、この段階こそが商談のクライマックスであり、お客さまにとって問題解決のパートナーたり得るか否かの最大の分岐点です。決して勇み足をすることなく、自分の気持ちを前面に出し、お客さまの心を動かすことが求められます。
本原稿は、株式会社ジェック『行動人』から転載・加筆いたしました。