あるコマーシャル
自分の娘が叱られた!
「今日、〇〇〇(娘の名前)が知らない人に叱られたんだよ!普通、他人の子を叱る?」
と怒りをぶちまける。
そこで夫が、
「なんで、叱られたの?」
と尋ねると、
「悪いことをしたんだけど・・・」
と妻。
-この後、娘が公園の花を勝手に摘んでいたところを、近所の奥さんが膝をかがめて「ダメだよ」と諭している映像が入る-
そして夫が、
「叱ってくれる人がいるって、悪くないんじゃないかな?」
と淡々と言う。
最後は夫婦に沈黙が流れ、妻の表情が少し柔らかくなる。
●これって、面白いCMですよね
「幼いわが子が、見ず知らずの他人から叱られた」という事実は同じことでも、夫と妻では、感じ方がこんなにも違います。
なぜでしょう?
ここで「思い込み」君が登場します。
このCMの妻は、
「そもそも、わが子を他人に叱られるスジアイはない!」
「他人の子どもを叱るなんて、ヘンな人」
と単純に思い込んでいたのかもしれません。
-最近はこのあたりも物騒だから、どこに犯罪者がいるかわからない。
わが子を叱った大人も、どんな危険人物かわからない。
たまたま今回は大事には至らなかったけれど、とにかく、他人の子どもを叱るなんて、信じられない神経の持ち主だ。
今度そんなことがあったら、すぐに「助けて!」と叫んで逃げて帰るように、娘にしっかりと言っておかなくっちゃ!-
こんなふうに考えたのかもしれませんね。
片や夫は、
「他人の子どもを叱ってくれるなんで、ありがたい人」
と単純に思い込んでいたのかもしれません。
-最近は地域ぐるみで子どもを育てるという発想を持つ人が増えてきている(昔は、そうだったとも聞く)。
わが子を叱った大人も、そんな立派な考えを持った人なんだろう(きっとそうだ)。
たまたま今回は、わが子が叱られただけで、とにかく他人の子どもを叱ってくれるなんて、本当にありがたい人だ。
今度その人に会ったら、「この前はありがとうございました」とお礼を言うように、娘にしっかりと言っておこう!-
こんなふうに考えたのかもしれません。
とにかく、妻も夫も、自分なりの「思い込み」を前提にして語っているわけです。
●さて、どちらが正しいのでしょう?
現実の社会では、叱った人が(妻の思い込みどおり)「変質者だった」ということもあり得るし、(夫の思い込みどおり)「とても素敵なありがたい人だった」ということもあるでしょうね。
また、アタマでは「子どもを叱ってくれるなんて、ありがたいことだ」と道徳的な通念としてわかっていても、実際に幼いわが子が見知らぬ大人に叱られるのを見れば、感情は「信じられない!」、「うちの子に勝手なことをしないでください!」とキレてカラダが反応してしまうかもしれません。
あなたはいかがでしょうか?
アタマではなく、カラダに染み付いた思い込みは、私たちの行動選択を方向づける「行動理論」です。
さて、あなたの「思い込み」は妻タイプ?それとも夫タイプ?
追伸-どっちが正しいか「白黒ハッキリつけてほしい!」「ハッキリしないのは不愉快だ」と思った読者もいることでしょう。
でも、どうしてそう思ったのでしょう?
「白黒ハッキリつけるべきだ!」というのも、あなたの思い込み?
本原稿は、株式会社ジェック『行動人』から転載・加筆いたしました。
