I理論(Y理論を甘く解釈し、「人は愛情をもって接し、全面的に信頼してかかれば、必ずそれに応えようとするものだ」)の蔓延には、もう一つ背景がある。
それは、誤ったワークライフバランスの認識だ。
育児休業や再雇用制度、家族参観日や誕生日休暇、在宅勤務制度や時間差出勤、キャリア開発援助等、個々人のライフスタイルに合わせて働ける環境をつくり、周囲の意識を高めていくのはいいことだ。
ただ、それが行き過ぎて、成果が出なくても良しとしてしまったり、労働条件が人によってまったく変わってしまうことで、他の従業員のモチベーションを下げているのなら、それは考えものだ。
仕事で成果を出して、私生活も充実させる。それが本来のワークライフバランスのはずである。
しかし、I理論の下では、個々人に管理を任せてしまうため、そのバランスが崩れ、多くの場合には、「ライフ」の側に力が偏ってしまう。
結果として、「頑張っているようなら、それでいい。成果は求めない」ということが起こりやすい。
逆に「ワーク」の方に力がかかってしまう場合もある。
その場合も、「本人は自分で管理をして頑張って、成果を出そうとしているのだから、それでいい」と、働き過ぎやメンタル面の不調を見逃してしまうことになりかねない。
本当に、従業員の能力を引き出そうと考えるならば、時間の使い方や働き方を検討し、無駄を省き、日々の業務の中で積極的に取り組める課題を設定しなければならない。
そこに、放任的な管理はあり得ず、仕事の成果は強く求められることになる。
ワークライフバランスを充実させようとするならば、改めてY理論の重要性をかみしめ、実践することが必要ではないだろうか。
20140604 ジェックメールマガジンより