企業成長の根底は『お役立ち』

「漁師ティコとウォールストリートのアナリスト」という話がある。

(『ビジネス寓話50選』, 博報堂ブランドデザイン編, 2012, アスキー新書)


どのような話かというと(以下要約)、漁村で一日数時間、数本のカジキマグロを釣り、

残りの時間を寝たり・ワインを飲んだり・友人とギターを弾いていたりする漁師に、

都会から来たビジネスパーソンが、もっと沢山働いて、カジキマグロを沢山釣って、

沢山儲けてはどうかと持ちかける。

沢山売って、会社を作り、大きくすれば、大金持ちになると説く。


漁師が「金持ちになってどうするのか?」と聞くと、ビジネスパーソンは、

「小さな漁村に引退して、寝たり・飲んだり…」と先に漁師がしていることを答える。


この寓話は、「個人にとって何のために仕事をするのか?」ということと、

「企業にとって、成長や拡大は、必要なことなのか?」ということを考えさせられる

ものだ。


個人にとってみれば、日々の生活が大事である。

その生活が、充実し、楽しければ幸せではないだろうか。

充実の中身には、成長感や達成感、交流による相互刺激などがあるだろう。


一方、企業は、発展し続けることを求める。

アダム・スミスは、著書『道徳感情論 上』(水田洋訳,2003,岩波文庫)の中で、

社会的地位や富を求めるその心の動機を「虚栄」と断じた。

その上で、「虚栄」が経済活動の原動力であることを認めつつ、正義感によって

制御された行動を求める。


「虚栄」をベースとした「金儲け」だけのための行動は、許されない。

弊社の言葉でまとめさせていただくなら、根底に「お役立ち」の精神がなければ

ならないということだと思う。

様々なステークホルダーに支持され、喜ばれる企業こそが、存続、発展するのだ。


東日本大震災で被災した浪江町の酒蔵が、山形県長井市に移り、

そこの酒蔵を買い取って酒造を続けているという。(朝日新聞2018年3月5日34面)

麹は、県の施設に預けていたものを使い、今では福島県産の米、水を使って、

純福島産の日本酒を作っているそうだ。

さらに買い取った長井市の酒蔵がもともと作っていた酒も継続して作っているという。


地域の産品を使い、地域のために働き、地域に貢献する企業に対して、

「そんな無理をせず、違うやり方の方が儲かるのに」というのは冒頭の寓話を彷彿させる。

地域に根差した末永く続くお役立ち企業を作ることの方が、

虚栄に満ちた心で事業を拡大させ続けるよりどれほど有意義なことであろうか。


ジェックメールマガジン 20180322より


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