「手形」から「差異化」につながった話

「ある時、納品した機械に人の手の形に錆が浮いてきたんです。


調べてみると、確かに、規定通りに塗装はされている。どうやら塗装前の鉄板に手をついて、その手の油のせいで、そこだけ浮き上がってきたことが分かりました。


そんなこともあって、外注に出していた塗装も内製化することになったんです。

内製化率が高い、とよく言われるのですが…。

そうでないと、品質をしっかり確保できないという考え方をしているんです。

……という話が、結構、お客様に受けるんです」


「手形」といっても、お金の話ではなく、文字通り「人の手の形」の話だ。


この話は、研修の場で、たまたまその企業の営業担当者から聞いた。


営業現場でよく使われるトークだそうで、自社の差異化を生んだ事例として、社内伝説になっているらしい。

ただ、このような「営業が自慢できる商品の話」を、同じ研修の場にいたその会社の塗装の担当者(入社12年目)は知らなかった。


「いやー、モチベーション、上がります」と答えていたが、本来なら、塗装の現場でも仕事の重要性を伝える話として、伝承されていてもおかしくないはずだ。


手形の話は恐らく「苦情」として製造現場に伝えられ、内製化によって改善された。


しかし、それ以降、現場で「なぜ、内製化しているのか?」という話が伝承されることはなかったのだろう。


結果として「暑いところにいる仕事で大変なんです」等、仕事に対する不満は聞こえても、やりがいは聞こえなくなる。

これは、非常にもったいないことだと思う。


この様な話は、単に製造現場のモチベーションを上げるだけではない。

営業トークとして、自社の特長、差異化要因をコンパクトにまとめて使える。


つまり、自社の強みである。

それをよく理解することなくものづくりを進めても、誇りや改善意欲は生まれない。

自社商品が好きだ、世の中で役に立っている、そう感じるからこそ、製造現場でも改善が進み、良いものが作れるのではないか。


冒頭の会話のような顧客接点における「自社の強み」や「お褒めの言葉」等は、なかなか製造現場までフィードバックされない。

自社商品の評価まで、製造現場の人の意識はなかなか向わないし、営業も伝えない。

ただし、苦情は伝える。(これは、製造にかかわる者としての責任でもある)


こういうことはメーカーの営業と製造の話だけではなく、営業と経理等の顧客接点のない部門との関係にも言えることだ。


自社の強みや評価を知ることは、全従業員にとって必ずプラスになる。

そのためには、現場情報のフィードバックをもっと活発に行ってはいかがか。


20181018 ジェックメールマガジンより


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