「手形」から「差異化」につながった話

「ある時、納品した機械に人の手の形に錆が浮いてきたんです。


調べてみると、確かに、規定通りに塗装はされている。どうやら塗装前の鉄板に手をついて、その手の油のせいで、そこだけ浮き上がってきたことが分かりました。


そんなこともあって、外注に出していた塗装も内製化することになったんです。

内製化率が高い、とよく言われるのですが…。

そうでないと、品質をしっかり確保できないという考え方をしているんです。

……という話が、結構、お客様に受けるんです」


「手形」といっても、お金の話ではなく、文字通り「人の手の形」の話だ。


この話は、研修の場で、たまたまその企業の営業担当者から聞いた。


営業現場でよく使われるトークだそうで、自社の差異化を生んだ事例として、社内伝説になっているらしい。

ただ、このような「営業が自慢できる商品の話」を、同じ研修の場にいたその会社の塗装の担当者(入社12年目)は知らなかった。


「いやー、モチベーション、上がります」と答えていたが、本来なら、塗装の現場でも仕事の重要性を伝える話として、伝承されていてもおかしくないはずだ。


手形の話は恐らく「苦情」として製造現場に伝えられ、内製化によって改善された。


しかし、それ以降、現場で「なぜ、内製化しているのか?」という話が伝承されることはなかったのだろう。