三つの落とし穴

伊丹敬之氏は、著書『経営を見る眼』(2007,東洋経済新報社,p.166-170)の中で、戦略設計で起きがちな落とし穴として、次の三点を挙げている。


・夢とデータの間のバランス

「戦略とは、『こうありたい』という意思」であり、現実の起こっていることではない。

だから、データで示せるようなものではないし、もし、データで示せるのなら、誰かがすでにやっていることと言うことになる。


・ボトムアップ

戦略は、現場が実行するものだからという理由で現場に作らせると失敗するという。

もちろん、現場を熟知していなければ作れないものではあるが、設計するのはトップということだ。少なくとも、基本的な戦略の設計は、現場が作ろうとすると現実に拘泥して、良い戦略は作れないという。


・成り行きの第一歩

変革への行動には、エネルギーがいるが、力を掛けずに成り行きに任せたり、現場に任せきりにすると、失敗するという。現場が戦略を行動化するのだが、この第一歩だけは、トップが責任を持って進め、小さくとも成功事例を作ることが必要だということだろう。


戦略を推進する上で失敗した事例をこの三つの落とし穴から考えてみる。


「夢とデータの間のバランス」

親子騒動があった大塚家具の「子」である新社長の出した戦略の失敗は、データで示されている市場データで戦略を作り、他社と同様の低価格の分野に進出したことで、差異化要因がなくなってしまったと読めないだろうか。


「ボトムアップ」

直接、ボトムアップではないが、女子高生を中心に清涼飲料を企画させた会社がある。

これは、まったく売れなかった。

消費者にニーズを聞いて、その通り作っても売れないことは実際多い。

商品開発には、戦略的な判断が必要だからだ。

商品開発をトップにプレゼンして決める会社が多いのは、うなずける話である。

https://marketingis.jp/archives/1680(20190306閲覧)


「成り行きの第一歩」

『週間ダイヤモンド』(ダイヤモンド社,p.8-10,2019/1/19発行)に掲載されていた三越日本橋店がこれに当たるのではないかと思う。

従来の超VIP対応の部門を再編し、顧客情報をデジタル化して、誰でも対応できるようにする等といった改革を本部主導で進めているようだが、現場は付いてこない。


そもそもその動きに懐疑的だという。成り行きで成功事例が出ればよいが、おそらくこのままでは出ないだろうと記事は見立てている。


戦略推進には、原理原則があるということだ。

折角の先人の知恵だ。

ここを押さえて推進することが肝心である。

そして、たいがいの経営トップは、伊丹氏のいう三原則を意識はしている。


それでも失敗事例が後を絶たないのは、私が思うに、失敗する戦略展開は、「自分自身の行為を客観的に見られない」ということに尽きるような気がするがどうだろうか。


20190207 ジェックメールマガジンより


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