予期せぬことがイノベーションの機会となる

先日、あるお客様の会議に参加していると、

「新しい製品やサービスのアイデアを従業員から募る」という議題だった。

一見、何も問題がないように見えるが、私にはそうは思えなかった。


なぜなら、このお客様は自社製品のアフターサービス部隊で、

品質保証や部品供給などを考えると、

現場のサービス担当者の判断で他の機器に手を入れることはできない。

その背景もあり、「自分のところの機器以外は触らない」ことを信条にしてきた経緯がある。

そのような現場担当者が、いきなり新サービスを考え、応募するとは思えない。


ドラッカーは、イノベーションの機会として「予期せざるもの」を最初に挙げている

(P.F.ドラッカー『イノベーションと起業家精神』1985, 小林宏治監訳,

上田惇生+佐々木実智男訳, ダイヤモンド社, p.55)。

これは、予期せぬ成功、予期せぬ失敗、予期せぬ出来事など、

通常と違うことが生じたときに、その理由を追求することが必要ということだ。


おそらく、このお客様が今の段階で取り組むべきことは、

保守現場での他社製品情報の収集等とともに、

「意外なところから問い合わせがあった話」とか、

「これまで通りやっていたら、失敗した話」であるとか、

「こんなこと、できない?と聞かれてやってみたら、できたこと」等、

「予期せぬ出来事」として集約していくということだろう。

それが、新サービスの開発につながる情報となるはずだ。


前述の公募では、かなりアンテナの張った、創造性豊かな社員だけしか応募して

こないだろう。

もちろん、今の時代、他社製品を自社に切り替える働きかけや、

メンテナンスの幅を広げる等の動きを取り入れていかなければならない。

そんな動きを作ろうとしている中での話ではある。


オブザーバー参加ではあるが、そのまま進むのは良くないと思い、

この点を指摘しようと間を図っていたところ、

同じくオブザーバー参加していた参加義務のないある部門長が

「それより、現場のメンバーのつぶやきを集めたほうが良いのではないか?

そこにヒントがあるように思う」と指摘を入れた。

客観的に見ていると、同じようにそのままではうまくいかない、と思ったようだ。

その管理者は続けて「つぶやきの分析は、管理者全員でやる。

そうすることによって、現場もわかるし、新サービスも作れる」と言った。


ドラッカーは、「経営陣自らが、予期せざる成功について検討するために、

時間を使わなければならないのである。そして同時に、つねに誰かが、

予期せざる成功を分析し、それをいかに利用するかについて、

徹底的に考えることを命じられていなければならいのである。

さらに経営陣たる者は、予期せざる成功が、彼らに対して要求しているものを

理解しなければならない。」(同 p.71)という。


現場情報の収集と体系的な分析、この二つを両輪として、

イノベーションの機会を作ることが重要ということだ。


20190801 ジェックメールマガジンより



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