売ることが仕事ではない

ある企業で販売員のトレーニングをしている。 そのトレーニングの場で、お客様に対して「自社の商品を売るための情報」をやたらとお客様に質問する販売員がいる。 質問をするにあたっては、当て馬質問や関連質問などの手法を駆使し、質問力は、決して低くはない。 しかし、お客様側に立った想定で、お客様が買いたい理由などを推察しているのだが、それには触れず、ひたすら自分が売りたいがための質問をする。 こういう販売員は、結果として、売れない。 そこで、例えば、生活情報(普段どういう暮らしをしているか、時間の過ごし方等)を聞くように指導するのだが、今度は、それで得た情報を提案の場面で生かすことができない。 つまり、この販売員の問題は、お客様に心を寄せることができなかったり、状況を鑑みたりすることができないということだ。 その根本原因は「売ることが販売員の仕事」と考えているからに他ならない。 店舗で、「売る」ことを目的の中心に据えると、販売員の行動は「モノを売る」ことに偏る。 つまり、お客様の事情は関係なく(聴かない、聴いたとしても受け流す) お客様のことよりも、売る側の都合を押し付ける行動をとってしまうのだ。 もし、そのような販売員の行動で、「モノ」が売れたとしても、お客様は「買わされた」と感じてしまい、 その販売員や店舗には、二度と近づきたくないと思うのではないだろうか。 そこで逆に、「売らない」ことを標榜して、売り上げを伸ばそうという取り組みが、増えてきている。 丸井の一部店舗では、モノを売るのをやめたそうだ。 その中の1店、ファブリックトウキョウでは、服の採寸を店でやってくれるが、買う必要はないという。 森雄一郎社長は、「店舗は顧客体験の一部にすぎない。必ずしもそこで買ってもらわなくていい(2019年9月2日 日経MJ1面)」と言う。 丸井という百貨店は、モノを売る場所ではなく、 顧客に体験価値を提供する場に変わったということだろう。 昨今でいう、「CX=Customer Experience」の考え方だ。 これまでのように、仕入れ⇒売る⇒利益を得るという図式だと、売りたいものをこちらの考える価値観で売ってしまうことになる。 それを避けるために、「売らない」という選択肢を取ったということだ。 あるアウトドアブランドはかつて「このジャケットを買わないで」という広告を出したことで有名だ。 この会社は、環境保護にも力を入れており、 「本当に必要なもの以外は買わないで」ということを訴えたかったという。 そういう企業の方が逆に好まれ、それ以降もこの会社の業績は好調だ。 「売る」ことを前提にするのではなく、顧客の生活、価値観に沿った応対を強化する。 そういうことが結果的に企業の価値を上げ、永続的に続く組織を作るのではないだろうか。


20191128 ジェックメールマガジンより

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