見えざる資産を蓄積する

伊丹敬之氏の『経営戦略の論理(第4版)』(日本経済新聞出版社、2012年) の中に「見えざる資産」という言葉が出てくる。 企業の目に見えない資源とは、「技術開発力、熟練やノウハウ、特許、ブランド、顧客の信頼、顧客情報の蓄積、組織風土」などがあり、これらを「見えざる資産」と定義している。 これらのものは、どこかで買ってきたり、短い時間で作り上げたりすることができない。 顧客の信頼や企業風土などは、何年、何十年もの時間をかけて築き上げるしかないものだ。 さらに、本書では、見えざる資産の本質を情報と位置付けている。 その情報は、日常業務の中で、行き交い、蓄積される。 そして、顧客からの情報の蓄積も、単に接点に立つ営業担当者だけが持っていては資産とはならない。 それが開発部門やその他間接部門と共有、蓄積されることによって資産となる。 だからこそ、社員相互のコミュニケーションの機会を増やす必要がでてくる。 「日経産業新聞」の2019年11月27日版(1面)には、「対話増やす変なオフィス」として、テント型の会議室や複雑な形のオフィス配置などの事例が載っている。 これらを採用している企業は、150人程度に成長したベンチャーだ。 数年で人数が大きくなることで、「社員の雑談が減ってきた」ということが導入のきっかけだったと書かれている。 さらには、上司と部下との対話専用のブースまで設け、月に一度は対話をするようにしているという。 これらの施策により、離職率がほぼゼロになったという。 離職率の低下は、副次的な効果のようにも思えるが、育成した社員の定着は見えざる資産の蓄積そのものに他ならない。 ただ、近年のIT企業による巨額買収などをみていると、その「見えざる資産」まで評価しているのか、わからないことも多い。 見えざる資産の中でも、「ブランド」や「特許」、「顧客情報の蓄積(その企業での購買履歴や顧客属性等)」は、ある程度、外面的に評価できるかもしれないが、 「組織風土」や「顧客の信頼度」、「熟練やノウハウ」は、その組織の中にいなければ、知覚できないものだし、外面的に評価することは難しいのではないだろうか。 真の企業価値は、この「見えざる資産」にある。 これをどれだけ蓄積していくか、そのための仕組みを作り、活用して従業員一丸となって行動することが必要ということだろう。 全従業員に理念教育や行動訓練を行う理由がここにある。


20191213 ジェックメールマガジンより

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