私が担当している従業員500名ほどのあるメーカー様は、
近畿圏の周縁に当たる地域が発祥で、そこに主工場を持つ。
その分野では、海外でも高い評価を得ている製品を作っており、
販社が欧州にもある。
そのため、日本国内で展示会を開催すると、海外の取引先から数百人もの人が集まる。
国内では、特約店を中心にした販売網を持ち、各分野の製品シェアも高い。
社員の採用に関しては、
従来は「新入社員しか採用しない」ということを徹底していた。
しかし、近年、次第に中途入社も採用するようになっており、
さらには、外国人の採用にも踏み切り、
日本で採用、育成した人材を世界各地に送ろうともしている。
そして、さらには、複数に分かれていた販売会社を一本化し、
社長を外部(同業他社)から招いた。
このように、採用層を多様化するということにも着手している。
しかし、どれほど売り上げが上がろうとも、
規模の拡大を積極的に行うようなことはない。
社長は「地域で評価されることが第一。
それには、人をきちんと雇用すること、それにつきる」という。
このメーカーのように
・規模の拡大は狙わない
・儲かるから、時流だからと、
新しいことに次々と手を出すようなことはしない
・身の丈に合った成長を守る
・雇用を守ることが一番重要で、そのための努力は惜しまない
というような地域に根付いた企業は日本にたくさんあるように思う。
企業の評価は規模ではなく、「信頼」で決まる。
その信頼は、長年にわたる企業活動が、多くのステークホルダーに
認められているということから生まれるものだろう。
その点で、地域社会に認められる企業であり続けるために、
最も必要なことが「雇用を守る」ことではないだろうか。
報道では、黒字でも人員削減策を打ち出す上場企業があったとある。
(「日経新聞」2020年1月13日1面)
不確実性が高く、どのような未来が来るのかわからない時代、
体力のあるうちに事業構造の転換を図ろうという意図はわからないでもない。
ただ、同じことを地域密着企業がやれば、その地域からはいられなくなる。
貢献すべき軸足をどこに置いているのか
(地域か、株主や事業の持続的成長か、等)、その差ではあるだろうが、
釈然としないものを感じるのは、私だけだろうか。
20200319 ジェックメールマガジンより