終身雇用の生かし方


「終身雇用」は、日本の雇用慣行として、強みと弱みの両面から論じられることが多い。


職種によっては、会社を渡り歩くことで磨かれる技能もあるし、それによってステイタスを上げていくということもあるだろう。

そういう意味では、転職は効果的な方法として考えられなくもない。

しかし、私は、安定した社会を作るためにも、終身雇用を強みとしてとらえ、生かしていく方を支持したいと思っている。


『現場から見上げる企業戦略論』(2017,角川新書)という本の中で、東京大学 ものづくり経営研究センター長である藤本隆宏教授は、次のように書いている。


「企業が利益確保とともに雇用安定を暗黙の努力目標とし、もって現場と経営者の信頼関係を確立しなければ、従業員の主体的かつ持続的な改善努力の形成は難しい。


逆にこの信頼関係があれば、会社の業績、現場の存続発展、自分自身の生活とやりがい、これらが連動するようになる。


だから逆境になれば、現場人はジタバタして物的労働生産性を向上させ、

一致団結して現場の存続努力を行えるのだ。(同 p.187)」


「所属する」「認められる」「役割を与えられる」等ということに、人は組織で働く誘因を持つと私は思っている。

自己実現欲求を中心に、働く誘因を考える人もいるが、それよりも「誰かの何かに役立ちたい」「認められたい」という所属欲求や承認欲求の方が重要であるし、誘因としてこれらの要素を持つ人が多いと思う。


所属欲求、承認欲求を満たすために、配置転換や昇格という制度がある。

ただ、これらは長期評価による施策だ。


日々の施策として、「所属する」「認められる」「役割を与えられる」等を

実感するような場面を用意することが求められるのではないか。

毎日を楽しく、自分らしく働くそんな環境を用意しないといけない。


かつては、人事管理や採用のためのツールだったHRテックでも、最近はこのような点に配慮したサービスをよく見かけるようになった。

相互に「いいね!」を押し合い、その数で評価したり、モチベーションに関する調査ができたりする。

さらには、資質やスキル、本人の志向などを見える化して配置転換に生かすこともできるようになってきた。

HRテックの役割が「人事の効率化」から、「戦略人事へ転換した」と言ってもよいと思うが、これも「使い方次第」という側面がある。


人が所属欲求や承認欲求を満たすのは、生身の人間がお互いに接する場面での言葉や態度の方が大きいだろう。

リモートワークも多くなる中、難しいとは思うが、日々の仕事ぶりを見て、ほめたりアドバイスしたり、お互いに工夫し合うという環境を作ること、それが継続的に所属・承認欲求を満たし、能力・ロイヤリティを高める近道だと思う。


20200625 ジェックメールマガジンより


関連記事

すべて表示

【商談の壁を乗り越える!】住宅メーカーで集合住宅を販売している入社3年目のMさん お客さまの本音がわからない

住宅メーカーで集合住宅を販売している入社3年目のMさん お客さまの本音がわからない 私は、お客さまには比較的よい印象を持っていただき、打ち解けた雰囲気で商談を進めることができています。 また、商談においては、常にお客さまの心を開いていただいてからでないとリサーチ(お客さまの本音

今だからこそ「心理的安全性」の重視

弊社では、リーダーと部下との関係を相互の信頼関係で測るという理論を持っている。 上下の間の信頼関係ができていれば、お互いに同じ方向を向いて、虚心坦懐に話すこともできる。 組織内の信頼関係づくりが有効であることは間違いないだろう。

ばらつきを生かす

工業製品以上に、人間のやることは、もっとばらつきが大きい。 いくら標準化しようとも、人によってやり方や考え方は違ってくるものだ。 ある程度一定のルールややり方で縛られている業務であれば、アウトプットの差は少なくなるだろうが、同じ業務でも人によってそのスピードや手順が変わっているこ