真の原因から分析する

弊社の本社事務所がある池袋のサンシャイン60の出入り口には、かつて、各出入り口に回転扉があった。

それがなくなったのは、六本木のとあるビルで回転扉に挟まった少年が死亡したことが契機となり、回転扉そのものが危険なものとみなされ、撤去されたからである。


これは、日本中で起こったことで、近年、ほとんど回転扉を見ることはなくなってしまった。

本来、回転扉は、ビル内の冷暖房機能を高める(空気が出ていきにくい)、ビル内外に気圧差があるため、一気に空気を急激に流入(流出)させない、という目的のために使われる。

東京ドームにある回転扉が今も使われているのは、ドーム内は加圧されていて、外部との気圧差が大きいためである。


六本木の回転扉の事故原因は、いくつか指摘されている。

・海外の回転扉はアルミ製で軽いが(同程度のもので0.9トン程度)、 六本木のものは鋳鉄製で重かった(2.7トンあった)。

・そのため、電動で動かしており、センサーが働いても停止するまでに 25センチ動いた。

・そもそもセンサー位置が120センチと高く、子供は感知されない。


この六本木のビルの回転扉は、実用上のメリットよりも「見栄え」を考えて導入されたといわれる。

これは、ユーザー側の要望だったが、それに対してメーカー側が、「安全を考えると、無理です」と言わなかったのも問題だろう。

もっとも、そこまでの知見がメーカー側になかったようでもある。


サンシャイン60にあった回転扉は、手で押すタイプで、電動ではなかった。

だとすると、できるだけ軽く作られていたはずだ。

本来の回転扉設置の目的からすれば、大きな電動式の回転扉はほとんどのビルで必要はない。

それを「見栄え」を気にして、大きな電動式のものを安全性を考慮することなく導入してしまったことが、事故の最大の原因ではないだろうか。


この一つの事故で、「回転扉」というものが、その利便性、メリットを考慮されず、ほとんど撤去されてしまった。

交通事故があったとしても、自動車は必要だからなくならない。

それはわかる。

同様に、本来の目的で使われていれば、ビル空調のエネルギー削減に大いに貢献したであろう回転扉はなくなっても良かったのだろうか。


回転扉の事例でわかるのは、人は、象徴的な出来事一つで、あるものを全面的に否定したり、肯定したり、極端に振れてしまいがちということだ。

しかし、事実をしっかりと見て、その利便性とリスクを考慮して判断するということが本当は必要なのではないだろうか。


参考1)『重大事故の舞台裏(日経ものづくりの本)』p.165~172, 2005, 日経BP社)

参考2)http://www.shippai.org/fkd/cf/CZ0200718.html


20201015 ジェックメールマガジンより


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