原因を単純化しない

誰もが知るタイタニック号の事故の最大の悲劇は、乗員の20%しか乗せられない程度の救命ボートしかなかったことにある。

もし、乗員の100%以上を乗せることができる状態だったら、あれほどの死者を出さなかっただろう。


「なぜ、20%程度の救命ボートしかなかったのか」という人もいるだろう。

当時の考えでは、救命ボートは救助にきた他の船舶に乗り移るまでの道具で、その救命ボートで全乗員が海を漂うということは考えていなかったのだ。

残念なことに、流氷のある海域で、きわめて危険があったため、すぐに駆け付けられる船舶が少なかった。

そのような複合要因で、あの悲劇は起こった。


それだけではない。

多くの人がなくなったのは、救命ボートに理由がつけられるが、タイタニックの直接的な事故の原因は、氷山にぶつかったことにある。


ぶつかった原因をあげるとすると、次のようなものになる。

・船舶会社間の大西洋航路のスピード競争があり、早い速度で航海していた。

・「不沈船」との誤った喧伝があり、余計な安心感を持っていた。

・監視する船員が双眼鏡を携帯していなかった

 (前任者がそれを格納した場所を教えていなかった)。

・周辺を通行する船から氷山への警告があったにもかかわらず、十分な回避行動を取らなかった。(無線の故障や、乗客の依頼対応で無線の発信に無線員が専念していたという話もある)


その他にも、船体の鉄板と鉄板を重ねて接続していた「リベット(接続部品)」が、低温に対して脆弱な品質のものだったため、衝突時に破損し、そこから海水が侵入したとも言われている。

タイタニックの姉妹船であるオリンピック(先に就航している)は、第一次世界大戦で、ドイツのUボートに船体をぶつけ相手を沈没させている。

それくらい、強い船体だが、条件が変われば、脆弱になるのだ。


このように、事故は複数の条件が重なり、複雑に絡み合った結果、生じる。



2005年に起きた、JR福知山線の事故の際、マスコミは「社員教育が懲罰的だった」等と経営指導体制を責め立てたが、その部分だけ取って改善しても仕方がない。


一方で技術者は、車体強度や列車自動停車装置を取り上げて、その不備を改善しようとする。

どれも間違いではない。

多くの原因が絡み合って生じた事故だという認識がまず重要だ。



事故だけではない。

たいていの物事の原因は一つではなく、複雑な条件が絡んで生じる。

物事の成因を単純化したがる人は多いが、世の中、そんなに単純にはできていない。


若手社員が辞めていく理由を聞くと、待遇に課題があったとする。

では、給料を上げたり、休暇日数を増やせば、離職は防げるだろうか?

実際には、待遇だけではなく、社内の人間関係や本人の資質や環境変化等、多数の要因が絡み合って離職するのだ。

解決策は一つではない。


様々な視点から考えられるようにしておくこと、多様な意見を吸収できるようにしておくこと、それがどんな場合でもより良い問題解決への道だと私は思う。


20201112 ジェックメールマガジンより

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