ばらつきを生かす


2020年11月29日、H-2Aロケットが43回目の打ち上げを成功させた。

H-2Aロケット43号機は、地球を観測した人工衛星のデータや画像を高速通信で地上に中継することができる「データ中継衛星」を搭載している。

打ち上げの成功確率は、97.7%と極めて高い。

失敗は、2003年の6号機のみである。


その6号機の失敗は、個体ロケットブースターの切り離しがうまくいかなかったことにある。

同じ構造、同じように作った部品で作られたH-2A1~5号機では生じなかったことが、6号機では起こったのだ。

その後、様々な改良を重ね、信頼性の高いロケットに成長した。


H-2Aロケットの前身のH-2ロケットも、打ち上げを何度か失敗している。

その中でH-2ロケット8号機は、墜落したエンジンを海底3000メートルから引き上げ、失敗の原因が調査された。

解明された原因は、液体水素が気泡となることで、振動を与え、ポンプ内のわずか15マイクロメートルの加工痕が拡がって壊れたことにあった。

(※マイクロメートルは、1ミリメートルの1000分の1)

どんなに精巧につくられたものでも、差つまり「製品のばらつき」がある。

そのわずかな差が複合的に悪い方向に働くと、事故が生じるのだ。


電車の運転士さんによると、車両ごとに個性があり、使用されるうちに、徐々に部品と部品が馴染み、ブレーキの具合や加速の仕方などに差が出るのだ。

電車も工業製品だが、完全に一緒とはならない。

最後のところで、運転士さんの技術に頼って、乗り心地も変わるということだ。


つまり、どんなモノづくりでも、人が関わる以上、最終的なアウトプットにばらつきがあるということは避けられないということだと思う。

一般的な工業製品は、そのようなばらつきがあることを前提に、耐用年数や使用期限なども決められているのだろう。


工業製品以上に、人間のやることは、もっとばらつきが大きい。

いくら標準化しようとも、人によってやり方や考え方は違ってくるものだ。

ある程度一定のルールややり方で縛られている業務であれば、アウトプットの差は少なくなるだろうが、同じ業務でも人によってそのスピードや手順が変わっていることはあるだろう。

ましてや、営業職や企画職のような職種は、相当なばらつきがあると思われる。


あるマンション販売の会社様でヒアリングをしていると、

「Aさんは人当たりは良いが、押しが弱い」とか

「若い人には受けるんだけど、年配層に弱い」とか

様々な特徴のある営業パターンが出てくる。

現場のマネジャーはそれらの特性を見て、担当するお客様を変えているそうだ。

つまりは、人の采配でばらつきを成果につなげているのだ。


人には、ばらつきがあるものという前提で、そのばらつきを特性、個性として生かすことが必要ということだと思う。

むしろ、「組織で仕事をする」ということは、ばらつきが生産性を高めるように仕向けていくことだろう。

そこが工業製品とは違うところだと思う。


個々人のばらつき、個性こそが組織の原動力なのだ。


20201224 ジェックメールマガジンより


タグ:

8回の閲覧

関連記事

すべて表示

第二の人生に備える

コロナ禍の今は、助走している時間すらないようにも思う。 おそらく、助走していた人も、今はその助走ができなくなっている。 助走するにも、方向の定めようがなくなっている人も多いだろう。 今は、新しいことに助走している人たちを応援することが必要な時代なのではないか。こういう時だから

今だからこそ「心理的安全性」の重視

弊社では、リーダーと部下との関係を相互の信頼関係で測るという理論を持っている。 上下の間の信頼関係ができていれば、お互いに同じ方向を向いて、虚心坦懐に話すこともできる。 組織内の信頼関係づくりが有効であることは間違いないだろう。

試行錯誤の新人育成

「シャドウワーク」という育成方法がある。 簡単にいうと「育成対象者が、先輩の仕事の流れをそのまま何度もトレースする」というものだ。やがて必要なスキル、知識を持ったところで、先輩の仕事の一部を代行させる。 徐々に、代行させることを増やし、最終的に一人でできるまでに持っていく。